第3章 お金の奥にある”交換”を見える化する
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あなたが周りに与えている”価値”を見える化してみよう
第2章では、手取り20万円貯金ゼロのOLだった私は、友達の協力を得て100万円の契約金も支払ってイベントスペースをスタートすることができました。当時の私、何かを教えたり提供できるものはありませんでした。スペースの運営も契約者の皆さんに手弁当で手伝ってもらいました。
さて、あの恵比寿のスペースにはどんな”価値”があったのでしょうか。そもそも、価値ってなんでしょうか?私たちが「価値」だと思っているのはなんなのか?この第3章でも一緒に考えて行けたらと思います。
A子さん、自分に価値はないと思ってるんですか?
そんなことは・・ないはずですけど、なんの資格も持ってないですし。平社員だし。
資本主義のこの世の中で、価値といえば資格やお金になることだと思われがちですが
本当に私たちって、人間関係からお金につながることだけを得ていられたら幸せなのでしょうか。
そんなことはないですよね。
みんなが勘違いしている価値提供の”価値”
価値提供って考えたときに、あなたにとって何が価値になると思いますか?「価値提供しよう!」と思ってコミュニティを作ったり、コミュニティに参加することを考えると、みんな肩に力が入ってしまいます。
主催する場合にはお金が稼げるとか、有益な情報とか、メリットのある情報を提供しなきゃと思うから、自分にはスキルがないから無理だ、忙しいから無理だって思っちゃうんですよね。わかりやすいからお金って言う指標とか、お金を払って参加してもらうときにお金的なメリットをすごく言いやすいんですけど、お金って何かの手段でしかないんですよね。お金が目的なのではなくて、お金の先に欲しい感情があるんです。
これまで3,000人以上にコミュニティの作り方を教えてきて、みんな「お金」とはいうけれど、お金最優先の行動はしてないんですよね。そもそもあなたが参加しているコミュニティも、目的は「お金稼ぎ」のためのものだけですか?あなたが友達だと思っている人も、「すごい肩書き」があるからあなたは友達になったのですか?あなたに「金銭的なメリット」をもたらしてくれるから、友達でいるんですか?そうではないですよね。あの人といると幸せな気持ちになる、嬉しい気持ちを感じるとか、ホッと安心できるという感情も価値なんですよ。
お金やスキルで交換されているもの以外の関係性をこちらの図表に整理してみました。
まず、アドバイザーっていう立ち位置がありますよね。コンサルタントとか、教える仕事をする人。難しく考えなくてもOKで、子育て経験があれば妊婦さんにとっては、アドバイザーになれるんですよ。機会提供者っていう立ち位置もあります。あと出資者(お金を出してくれる)っていう立ち位置もありますね。これを1つ、誰かのリソースとなるような役割としてリソースネットワークといいます。
・アドバイザー
・機会提供者
・出資者
そして、同じ目標を持って同じ目線に立っている同志っていう価値提供もあります。あなたのやっていることを推薦するよ、人にシェアするよっていう推薦者や、あなたのやることを応援してくれる支持者という価値提供もあります。
・同志
・推薦者
・支持者
そして私の仕事を一緒にやってくれるチームとか、マネージャー、私のプロジェクトの進行とか生産活動を手伝ってくれる人もいます。
・チーム
・マネージャー
あと妨害者とか、やろうとしていることの悲観論者とか、懐疑論者とか、それにくっついて行っておこぼれをもらおうとするコバンザメ、とか、こういうありがたくない関係性もあったりします。
・悲観論者
・懐疑論者
・コバンザメ
この繋がり方の面白いところは、1人の人がこの全ての顔を持っているということです。
A子さんという人がいて、会社員をしているから誰かの「チーム」としての価値しかない、と思っていたとします。でも、A子さんだって誰かに対してはアドバイザーになったり、あるひとにとっては出資者や機会提供者になることだってあります。
えーっちっとも想像できません。
A子さんって、手芸が趣味でしたよね?ということは、例えば私はお裁縫が全く苦手なのですが、娘の雑巾やタオルに「名前を刺繍してください」って幼稚園から言われた時にA子さんに相談したいと思います。そしたら、A子さんは私にとっての「アドバイザー」ですよね。それに、姪っ子さんがいるって伺いましたが、その子にお年玉をあげますよね。そうしたら、あなたは姪っ子さんにとっての「出資者」なんです。
あ!確かに…
こんなふうに、人って誰とどんな状況で接点をもつかで、全く違った価値提供(役割とも言います)をしているんです。
人はみんな色んな顔を持っている
急に哲学的なこと聞きますが、「私とはなにか」って考えたことあります?(笑)言葉を変えると、「あなたはどんな人ですか?」って聞かれたり、誰かに自己紹介するとき、名前だけ言うことは少ないと思います。有名人なら自分の名前だけで伝わりますけどね。「◯◯をしている中里桃子です」とか、所属の会社とか、趣味などを付け加えて表現していると思うんですよ。
individualって、英語のin=notという意味の言葉と、divide(分ける)がくっついて
individual=分けられないもの、個人
という意味の英語なのですが、小説家の平野啓一郎さんが「分人」という考え方を著書で紹介しているんです。
皆さんのアイデンティティって、1個じゃないんですよね。私でいうと娘であり、妻であり、母であり、保育園の先生からは「◯◯ちゃんのママ」であり、チームメンバーにとっては上司のような存在でもあり。お勤めの皆さんの場合は、誰かの部下であり、XXの先生であり、X高校の同級生であり…もう無限に関係性があるので割愛しますけど。いろんな自分がいますよね。
あなたと、その目の前にいる誰か。その関係性によってあなたのキャラクターや振る舞いは全く変わります。会社でバリバリ働いている時のあなたと、大好きな人とリラックスして過ごしている時のあなた、明らかに違いますよね。
同じように、あなたの目の前にいる誰かも、状況やタイミングによって、その人が求めているものは変わります。アドバイスが欲しい人なのか、ただいいねって言って欲しい人なのか、私に何かを手伝って欲しい人なのかっていうのによって変わるので、あなたという存在が発揮している価値は無限にあるんです。
ある友人が私のことをSNSで紹介してくれたんですけど
「オンラインサロンの第一人者で、そして僕のお友達であり、師であり、仲間であり、相談相手である」って書いてくれたんです。「幾つあるねん!」って自分でツッコミをしていましたけど、たった1人との関係性でもその時々によって関係性は違うものになります。
▼実際にセミナーで紹介した時の画像
長続きする人間関係って、大体こんなふうにいくつもの関係性が重なっています。相手に提供している自分の価値のパターンがいくつかあるんです。
「コミュニティを作りたい」という人の中には、仕事としてお金を稼ぐための手段としてコミュニティを考えている人も多いです。もちろんそれが悪いとは言いません。でも、こうやって関係性を分解してみると、お金をもらえる価値提供としてすぐ思いつくものが「アドバイザー」という立ち位置が多いですよね。コーチやコンサル業の人。すると
コミュニティ=お金を稼ぐ手段の1つ
という考えも悪くはありませんが、その背景に
お金を稼ぐ手段=人に教えること(知識が良い多いものを知識が少ない人に与える)
という考えが前提にあると、
コミュニティを作るには、人より知識が多くないといけない と考えてしまいます。
お金に囚われすぎてしまうと、人との繋がりまで、誰かに教えられるものがあるかどうか、アドバイスができるか、コンサルができるかとか、そうした立ち位置でしか考えられなくなってしまいます。お金になるか、つまり情報やスキルで「上に立てるかどうか」で人とのつながりを評価してしまうと、関係性を深める足かせになってしまいます。
なにをかくそう、かつての私が「上に立てるかどうか」という目線で
人との繋がりを考えていたので、友達が1人もできませんでした。
でも、上記の宮ちゃん(宮中さん)との関係性においては、ただの友達や雑談相手としてのやりとりの方がずっと多いんですよね。ここに価値提供のヒントがあります。 ひとりの人との関係性にも、そのタイミングや、相手が求めているものによって、自分ができる価値提供のつながり方が違うんです。その時ごとに、相手をよくみて、関わり方や提供するものを変えましょう。出会ってすぐにお金にすることが成功ではありません。
お金とは関係のないところで人間関係が生まれて、気持ちや情報のやりとりをしていく中で信頼が生まれていき、たくさんのやりとりをする中で、仕事として商品化されているものとお金もついでに交換される。そんなイメージ、伝わりますでしょうか。お金を第一優先にしてはじめると、関係性も続きにくいしお互い無理のある形になってしまいます。
そもそも、あなたの周りの人間関係って本当に「お金につながるメリット」ないとコミュニティメンバーになってくれない人だけですか?っていうと、絶対そうじゃないと思うんです。
「著者さんだ」「先生だ」って思うと、つい”引き立てて欲しいな”とか”すごい人だから話しかけちゃいけない”とか、過剰に媚びようとしたり、過剰に引いちゃったりとか、してないですか?
どんな人でも、あなたの経験とかあなたの立ち位置からすると「先輩」になってアドバイスできることもあります。私の場合は、母親になって3年たらずなので大体のお母さんが「母親としての先輩」になって、どんな話も参考になります。
あなたの周りに困っている人がいたら、その問題に対する知識がなくて解決はできなかったとしても、とにかく話を聞いてあげて「理解者」になることもできるんですよね。
今の自分からみたら”すごい人”でも、自分に提供できることが”何もない”と思っていたとしても、その人を手伝う/応援することはできます。
例えば、私が会社員の頃セミナーに参加して、よくやっていたのが、資料を配るのを手伝ったり、机の移動や椅子を運ぶのを手伝ったり、自分も参加者だったのですが、気が付くところでサポートに立ち回ったりしていました。そうすると、今度連続講座やるから事務局やってくれない?とか、よく会社員の時にもらっていました。その動きがそのまま、独立した後に講師のコミュニティ運営をお手伝いするという役割で仕事になっていきました。
だから、あなたが提供できる価値って、自分で気づいているよりたくさんあるんですよ。
ー何者でもなくても、コミュニティはつくれますか?
そんな質問からはじまったこのストーリー。
その答えはもうわかっていますよね。
つくれます!!
時給860円の私の価値提供の実例
ちょっと時間を巻き戻してみましょう。2013年、私が初めてコミュニティに出会った頃、時給816円のネイリストでした。資格はありませんでした。それなりに自己投資はしていたのでスキルは持っているつもりでした。でも…
・たくさんの講座に参加するもの「使わせてもらえる場」を作れない
・職場での人間関係がうまく行かず、年に1回は転職して全てをリセット
・民間の講座に参加するばかりで履歴書に書けるような資格もない、運転免許もない
・人生迷子で迷走発信ばかりをするのでSNSでも影響力もない
読書会の主催に関わった時に、私がやっていたことは価値提供という目線で分類すると「アドバイザー」になるような内容はありませんでした。なるべく「妨害者」になるような行動もしないようにしていました。出会ったコミュニティ主催者の仲間とはフラットな関係でしたので、私は「同志」や「チーム」として貢献できるように動いたのでした。「一緒にやりませんか」と誘われたその当時、教えられる事なんてほとんどない、バイトみたいな待遇の会社員です。
改めて、どんな経緯で誘われたかを思い出してみると
・読書会に参加する(支持者)として人と出会います。
・すごく楽しかったので、その感想を長文で送ります。(支持者)
・主催の人に「一緒にやりませんか」と誘われ快諾しビジョンを作る(同志)
・無償で一生懸命働く(チーム)
・その読書会の集客のためのPRや告知をたくさん行う(推薦者・チーム)
という流れで、自分の才能らしきことを見つけるために、そして見つけたタネを磨いていくために、人を応援する気持ちで行動してSNSを通して発信をしていました。初めて友達らしき、仲間らしき人ができて、30数年の不貞腐れたエネルギーが浄化されて、私の発信はさわやかになってゆきました。ここまでは、具体的なお金の動きはありません。参加費も500円からスタートして、1000円になってから値上げをしていませんでした。本当にスタートしてからの丸1年は完全に持ち出しで、公私ともに収入は増えないままイベント活動をしてきました。
さて、ここからは具体的に1万円以上のお金が動き出した時の話を始めたいと思います。
お金をもらう時も 自分をすごく見せなくていい
読書会や恵比寿の貸しスペース、私自身のコミュニティ運営を経た私は、2022年、みんながイメージするように自分をアドバイザー的なポジションに据えて、「あなたの夢を叶えるわよ!」といって期待をさせて参加させることが、そもそもの間違いだと気が付きました。
「こんなにサポートがついて手厚いですよ」「夢のような世界が待っていますよ」というと、安心して参加はしてもらいやすいかもしれません。でも、その分相手は動かなくなります。また、コミュニティなのに相手を”お客さん扱い”したり、自分を”すごく見せよう”とするから忙しくなるんです。
桃子さん、私なんだかわかってきました。教えるって考えると難しいけど、応援ならできそうです。
そう。自分が感じた気持ちを伝えるだけでも喜んでもらえますし、嬉しいですよ。
だから、今自分の活躍する場所が見出せない」という人は、コミュニティを作ってみませんか。
あなた以外の1人と繋がることからはじめられるんです。そして、最初に繋がる1人も思い当たらないという人は、まずはコミュニティに「参加」をしてみませんか?
コミュニティ=2人からでいい
コミュニティをもつことで感じられるメリット
コミュニティとうまく付き合えるようになると、仲間ができて仕事はもちろん人生が楽しくなります。好きな相手といることで、自分の良い面が引き出されます。自分が誰と一緒にいるのか、どういう環境にいるのかによって、自分の発揮される性格とかキャラクターが変わるとお伝えしてきました。「この人と一緒にいるときの自分が好きだ」っていう人を見つけてみましょう。まずはそういう人と過ごす時間を増やすことで、自分が大切にしたいことが見えてきます。
いろんな人と関わることで、思いもよらない自分を引き出すことができて楽しいです。たまたま一緒になった会社や地域の人間関係で形作られた自分が、一生変わらないって面白くないじゃないですか。私は嫌です。それが嫌で田舎から出てきました。もしもすでに一緒に取り組む仲間がいたら、チームにコミュニティ運営の要素を入れることで、チームが活性化します。
私が7年前に会社を作ったとき、会社員でいるのがすごく嫌だったんです。独立して自分が会社みたいな組織を作ったりすると、絶対に嫌々働く人が出てきたりして、人と一緒にやるのが嫌だと思ってたところがあったんですけど、今は雇用という形ではなく、やりたいから一緒にやる、という形で一緒に働いてくれる人がいて、とても幸せです。
それに、コミュニティ運営のメソッドって、家庭にも活用できるんです。お互いに「大切なこと」を確認しあって、相手の得意なこととか、良い面が出る関わり方とか役割配分をすることができます。すると家庭も明るくなるし、一緒にいる家族の才能を発掘できます。
そして、みんなが得意なことをやっているから成果が出るんですよ。ストレスが少ないから人にも優しくできてますます良い循環が回ってきます。
会社って、できないことをできないままにしたら怒られますよね。研修を受けさせられて「人並みにこれをできるようになれよ」って、私もすごく言われてきました。でも、せっかく独立したのだから、得意なこと以外はやらなくていい。というか、人よりも不得意なことをやったら、絶対に平均より低いので仕事にならないんでやっちゃいけないんです。
続けたいことも続けられるようになる
あとは、習慣化したいこととか続けたいことが、仲間の力で習慣にできるから成果が出やすくなります。私は結構この機能をコミュニティに参加することで、補っています。子どもが2歳10ヶ月と0歳4ヶ月(2022年12月時点)なんですけど、自分一人では難しい部分をいい感じにカバーしてもらえているから、仕事を続けられてます。
長期的に関わることが前提だから「人をすぐに否定する」ということがなくなる
こうして長期的な関わりを前提にして、複数の視点で相手との関係性の中にある価値を観察できるようになると、「この人はダメな人だ」ってすぐに決めつけなくて良いことに気が付きます。会社では、価値を測る尺度が少ない(あるいは1つ)じゃないですか。売り上げとか生産性とか、効率と要領の良さ。こうした一つの尺度で測られてしまうところばかりにいると固定された物の見方が自分と同化してしまって他の見方も難しくなって行きます。会社の外に出てしまっても、会社での尺度で「この人はダメだな」って人を決めつけてしまうんです。
確かに。そういうこと、私にもよくあります。
でも、会社以外のコミュニティに参加することで、違うモノサシの世界を体験することができるんです。そうすると、本当に自分に必要なモノサシかどうかを吟味することもできるし、一旦今使ってるモノサシを相対化してみることができる。もしも自分で場を主催することができたら、自分が「大切にしたいこと」を一緒に大切にしてくれる人と深く繋がることができるし、門戸をひらけば新しく出会うこともできるんです。
「社会が優しくない、冷たい」と感じられるのは、その冷たい人、優しくない人も疲れていたり傷ついているからだと思います。そしてもし「自分が冷たい人かもしれない、人に優しくできないな」と感じているのだとしたら、まずは自分の傷つきを癒す時間を取ってみたらいかがでしょうか。自分が大切にしたいことを大切にしてくれる人とつながってみることも、自分を癒す時間になります。そんな優しい世界観のなかで、リラックスした関係性を作って、人にちょっとしたことを相談できたり、頼り頼られという関係性を持つことができると、前に進む力が湧いてくると思いませんか。
私、会社でよくダメ出しされて凹むことも多いんです。そんな世界があったら引っ越ししたい。。。
やりましょうよ、世界観のお引っ越し。
20代の頃は、転職や引っ越しなど、物理的な引っ越しを繰り返してお金がなくなってしまったんですが、今はインターネットがあるから、お引っ越しのコストもすごく安いんですよ。
私たちが本当に引っ越しが必要なのは、転職や引っ越しなどの物理空間での引越しではありません。価値観や世界観を引越すること=情報空間の引越しが必要なんですね。価値観は目に見えないから、変えるためにはちょっと工夫が必要なんです。
明日は、その情報空間のお引越しについて書いてゆきますね。
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